20200907
昼の3時、
ざあざあに雨が降っている。
夕立である。さっきまで曇天だったのに。
お気に入りのスカートが濡れたら嫌だわ。
でも今日行くと決めた喫茶店には行きたいし。
心を決め、
空が晴れる呪文をマスクの下で唱えながら、
道を歩く。
「■■■■■■■■を、■■■■■■を■■■■に■■■■、■■■と■■■■の■を■■」
高校時代に、
この呪文を教えてくれたM君は、
ヘンな子で良い「男友達」だった。
植物が好きだった。リトルグリーンメンが好きだった。
英語が得意だった。顔面がイケメンで、二年上の美人の先輩と付き合っていた。
家庭環境は荒れていて、テグーを飼っていた。
そして特に、黒魔術に傾倒していて、
晴れる呪文だよと教えてくれた呪文を教えてくれた。
2人で口にしながら自転車で帰路を急いだのだった。
きらきらきらきら雨粒が日光に照らされて綺麗。
狐の嫁入りといったか。おめでたい。おめでたいから、晴れて。
晴れて。晴れてくれ。
「■■■■■■■■を、■■■■■■を■■■■に■■■■、■■■と■■■■の■を■■」
東京で彼氏を作ったと聞いているが、今元気にしているのだろうか。
端正なルックスを生かして、何人目の彼氏を作っているのだろうか。
魔術のことはもう忘れてしまっただろうか。
僕は今も覚えていて、そして誰かに教えるとその効能が消える気がしてまだ誰にも教えてたことないけど一字一句、しっかり記憶に残っているよ。
別に忘れていてもいい。
いや忘れた方が健全なのかもしれない。
けれどもどうか、どうか僕みたいに錠剤頼りに生きていませんように。
気づけば雨はだいぶ収まってきていて、
日光に照らされた雨粒がキラキラ光っていて綺麗。
道端の雑草も青々としている。Beautiful。
10年前配偶者と息子達に暴力ふるっていた、警察官であったM君の父親も、この同じ市内のどこかでたった今現在「お、晴れたな」と思うのだろうか。
そろそろ眼が三つに分裂する頃だろうか。
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